夏作業所感/2008年2月23日(第49次しらせ南極新聞・投稿記事)

 49 次夏期建設作業で私が担当したのは、「管理棟給水暖房配管更新」と「燃料移送配管不具合調査」の 2 件です。

「管理棟給水暖房配管更新」は、基地作業支援の対象から外れていましたので、しらせ乗組員の皆さんにとっては馴染みがなかった作業かと思います。夏作業の後半に、主に管理棟 1 階の狭くて薄暗い機械室の中で、34 次隊で施工された配管類を取り替えていました。


 一方、「燃料移送配管不具合調査」では、しらせ乗組員延べ 25 名の方々にご支援を頂きました。

冷たい風が容赦なく吹き抜けていく中、発電棟から見晴らしタンクへ続くパイプラインに沿って、配管接合部ハウジングの取り外し・取り付け作業や仮設足場の解体・片付け作業をお手伝いいただき、本当にありがとうございました。お蔭様で、2月9 日に見晴らしタンクから基地タンクへの燃料移送作業も無事に完了しました。


 私が昭和基地で夏作業を経験するのは、今次隊で 6回目(25夏・27冬・32冬・40夏・41夏・49夏)になります。私の専門は、コ・ジェネレーション設備やプラント配管設備の設計で、この四半世紀の間、昭和基地・発電棟を中心とする様々な設備の設計を担当させていただきながら、時折やって来ては自ら施工して帰るという設計者冥利に尽きる仕事をさせていただいています。参加したそれぞれの隊次で、天候をはじめとする作業条件は様々で、作業を進めるなかで発生した問題も様々でした。一概にどの隊次が大変だったとかは言えません。その時その時で、問題を解決して作業をやり遂げることを念頭に仕事に取り組んできましたし、日頃の業務にはない「モノ作り」の面白さを楽しんできたと思っています。


 今次の 2 件も、これまで同様に設計を担当させていただきました。その中で特に思い入れが深いのが、「燃料移送配管」です。

41次夏の帰り際に既設配管敷設ルートを測量し、帰国後に設計に着手したものです。この燃料移送配管は、4m を定尺とした二重管(インナーパイプ 25A 又は50A,アウターパイプ125A)で、漏洩の際にも隣接する管への油の流入を防ぐ構造になっていること,接合部が 5°の許容撓み角度を有していることが特徴です。25A は JP-5 ラインに使用され、50A は W軽油ラインに使用されています。また、いずれにも漏油検知・位置検知システムが備えられており、発電棟・2階制御室で漏油発生場所・時間等を検知・記録できます。


昭和基地での施工は、43 次隊から 47 次隊までの 5期にわたって実施されました。本来は、施工区間毎に運用を開始する計画だったのですが、様々な事情から運用開始が遅れ、ようやく 48 次隊で一部を除いて運用が開始されました。しかし、運用開始から約半年後に漏油事故が発生し、今回の『不具合調査・手直し』となった次第です。


今次では、昨年 12 月 20 日から今年 2 月 5日迄の 31日間・180 人日の工数をかけて、不具合調査,インナーパイプジョイント部ゴムリングの超耐寒性製品への交換,漏油センサー取り付け手直し,見晴らし・新ポンプ小屋との最終接続配管工事を実施しました。予算の関係から 50 次隊以降へ残った作業も一部ありますが、パイプライン全区間の完成と言って差し支えないと思います。


現場調査から 8年かかりましたが、今ようやく肩の荷を半分降ろすことが出来たとホッと一息ついています。あとは、49 次越冬隊での無事の運用を祈念するばかりです。

5 期にわたった工事にご支援をいただいた方々を含め、関係の皆様全てにあらためて感謝の意を表します。どうもありがとうございました。